「無料動画アップスケーラー」で上位に出てくるサービスの多くは、実態として30日間の体験版だったり、書き出しに透かしが入ったり、ダウンロードできないプレビューだけだったりする。継続して無料で使える選択肢は、ブラウザ上で処理するものか、自分のGPUで動かすものが中心だ。その代わり、ブラウザ系はたいてい2×までで、PC側の性能に頼ることになる。
本当に無料で使える動画アップスケーラー7選
「無料」といっても、内容は大きく3種類に分かれる。オープンソースやブラウザベースの完全無料ツールは、アカウント登録も利用上限もなく動画を処理できる。クオータ制サービスは、登録時または1日ごとに決められた無料枠があり、それを超えると有料になる。体験版は一定期間だけ全機能を使えるか、支払うまで書き出しに透かしが付くタイプだ。以下では前者2種類を取り上げた。すべての制限は、公式ページまたは実機テストで2026年7月29日に確認している。
| ツール | 無料の種類 | 透かし | 拡大率/出力上限 | 無料枠 | 登録 |
|---|---|---|---|---|---|
| free.upscaler.video | 完全無料(オープンソース、ブラウザ内処理) | なし | 固定2× | 無制限 | 不要 |
| ArtPlayer upscaler | 完全無料(ブラウザ内処理) | なし | 固定2× | 無制限 | 不要 |
| Video2X | 完全無料(オープンソース、ローカル) | なし | エンジンに依存 | 無制限 | 不要 |
| SeedVR2 | 完全無料(オープンソース、ローカル) | なし | ハードウェアに依存 | 無制限 | 不要 |
| Krea | 無料クオータ制(クラウド) | 記載なし | 1×~8×、入力素材に依存 | 24時間あたり4本 | 必要 |
| TensorPix | 無料クオータ制(クラウド) | 記載なし | 無料枠は入力720pまで | 登録時クレジット+毎週クレジット(1クレジット ≈ 2分) | 必要 |
| CapCut | 編集アプリ内の無料プラン | 記載なし | 最大4Kをうたうが、詳細は非公開 | 非公開 | 必要 |
この表では、2点に注意したい。CapCutの公式ページは無料で4Kまでアップスケールできると案内している一方、透かし、動画尺、解像度については明らかにしていない。VideoProcのテストでは、オンライン版は2Kまでで、4Kはデスクトップアプリ限定と報告されている。ただし、この点は確認可能な範囲でCapCut自身が明言していない。Canvaにも動画アップスケーラーはあるが、無料プランの制限が公開されていないため表からは外した。
登録もアップロードも不要なブラウザ型ツール
free.upscaler.videoとArtPlayerの動画エンハンサーは、WebGPU経由でブラウザ内において超解像モデルを動かす。映像データがPCの外へ出ないため、アカウント登録も待ち行列もなく、サーバー側で透かしを追加されることもない。
free.upscaler.videoを実際に試した
free.upscaler.videoをApple M3 Pro上で試した。使用したのは320×180、4秒、H.264のテストクリップだ。これは短い1本を使った動作確認であり、ツール間の性能比較ではない。WebGPU経由でGPUが認識され、標準のBalancedモデルを読み込むと、書き出し前に左が元映像、右が2×アップスケール後のライブ比較プレビューが表示された。
操作できる項目は明快だ。解像度は2×固定で、今回のクリップは320×180から640×360になった。AIモデルはFast、Balanced、Quality、Ultraの4段階。モデルはAnime4KやReal-ESRGANを含むオープンソース超解像ネットワークのブラウザ移植版で、アニメーションコンテンツとの相性が特に良いとサイトが案内している理由もここにある。
制約はあるが、内容は明確に示されている。
- 拡大率は2×のみ。1080pなら1回の処理で4Kになるが、480pは1回あたり960pまでだ。
- 処理中はタブを開いたままにする必要がある。ツールのFAQによる仕様で、処理の一時停止と再開には対応している。
- HDRには非対応。10ビット動画は色がおかしくなることがある。
- 入力可否はブラウザのコーデック対応に左右される。ChromeでデコードできないAVI、MKV、H.265は読み込めない。また、端末側でH.264をエンコードできない場合、出力はWebMに切り替わる。
- UltraにはディスクリートGPUが必要。ない場合は1 fps未満になる可能性があるとサイトが警告している。
このツールはオープンソースで、sb2702/free-ai-video-upscalerからモデル構成やローカル処理の仕組みを確認できる。
ArtPlayer video enhancer
ArtPlayerのアップスケーラーも基本は同じだ。WebGPUまたはWebGLでローカル処理を行い、アップロードもアカウントも不要。出力は2×で、画質は3段階から選べる。親サイトにはトリミング、圧縮、字幕など多数の無料ブラウザ動画ツールがまとまっているので、アップスケールを一連の編集工程に組み込みたい場合に使いやすい。
クラウド型の無料クオータ制:KreaとTensorPix
クラウド型アップスケーラーはサーバー側で処理するため、性能の低いノートPCでも動かせる。その一方で、利用量は管理される。Kreaは小さな入力素材なら最大8×まで対応し、2×を超えられないブラウザツールより大きく拡大できる。ただし無料ページには、書き出しに透かしが付くかどうかの記載がない。実運用に組み込む前に、まず1本試しておくべきだ。
TensorPixには、表だけでは見えにくい制約もある。無料ファイルは低速な単一キューで処理され、ストレージは1 GB、アップロードしたデータは30日後に削除される。短い動画を時々処理する用途なら十分だが、家族のビデオテープをまとめて扱う用途には向かない。
CapCutとCanvaは、アップスケール機能を編集アプリに組み込んでいる。すでにCapCutで編集しているなら、エンハンス機能は追加コストなしで試せる。ただし公式の訴求と第三者テストの結果には食い違いがあるため、期待どおりの解像度で書き出されるかは確認してほしい(上の表を参照)。
本格運用ならVideo2XとSeedVR2
r/softwareやr/VideoEditingで頻繁に名前が挙がるのは、Webアプリではない。
「Topaz AIのようなアプリの良い代替を探しています。1080p動画をAIで4Kにアップスケールしたいだけです。」 — r/software
Video2Xは、この問いに対する定番の回答だ。waifu2x、Real-CUGAN、Real-ESRGANなど複数のアップスケールエンジンを1つのパイプラインにまとめた、無料のオープンソースフレームワークである。Windows向けGUIもあり、クリック操作でも使える。実用面でのコストは2つある。1つはセットアップで、エンジンとFFmpegの設定は初めて使う人にはつまずきやすい。もう1つは速度で、比較的新しいNVIDIA GPUがなければ長尺動画の処理には時間がかかる。PC性能がボトルネックなら、Video2Xには公式Google Colabノートブックも用意されている。READMEによれば、NVIDIA T4、L4、A100を1セッションあたり最大12時間、無料で借りられる。
SeedVR2は、より新しい選択肢だ。ByteDanceによるオープンソースのワンステップ動画復元モデルで、リポジトリではSeedVR2論文がICLR 2026に採択されたと記載されている。コミュニティ製のComfyUI nodeは、2026年7月時点でGitHubスター約2,700件を集めており、標準的なComfyUIワークフローで動かせる。r/upscalingの2026年の議論では、ユーザーが3BQ8バリアントをTopazのStarlightモデルより高く評価している。これはベンチマークではなくコミュニティの評価にすぎないが、片方が無料、もう片方が有料サブスクリプションであることを踏まえると、有力なシグナルではある。必要VRAMは相応に大きい。ワンクリックで済ませたい人向けではなく、愛好家向けの領域だ。
よくある質問
透かしなしで完全無料の動画アップスケーラーはある?
ある。free.upscaler.video、ArtPlayerのエンハンサー、Video2X、SeedVR2は、従量制サーバーで処理しないため透かしを追加しない。処理はブラウザ内または自分のGPU上で行われる。代わりに受け入れる制約は、ブラウザツールなら2×上限、オープンソースならセットアップの手間だ。
無料でオンライン動画を4Kにアップスケールできる?
1回の処理でできるケースはまれだ。無料クラウドプランには厳しい制限があり、Kreaは1日4本、TensorPixは無料枠の入力が720pまでとなる。ブラウザツールの出力は2×なので、4Kに届くのは1080p素材に限られる。無制限かつ無料で4Kを狙うなら、ローカルのVideo2XまたはSeedVR2、あるいはGoogle Colab上のVideo2Xが現実的な方法だ。
無料AIアップスケーラーはアニメにも使える?
ここで紹介した無料ツールにとって、アニメは最も得意な素材だ。free.upscaler.videoで使われるAnime4Kや、Video2Xで使えるwaifu2xはアニメーションコンテンツ向けに作られている。線がくっきりしており色がフラットな映像は、実写の粒状感よりはるかに自然にアップスケールしやすい。
無料ツールでは足りなくなった場合、Topazはいくら?
2026年7月29日時点で、Topazのデスクトップアプリは月額$59でローカルレンダリングが無制限。WebアップスケーラーのAstraは月額$19からで400クレジットを利用でき、HDエンハンスなら約10分に相当する。フル機能のStudioバンドルは年額$399だ。ここが無料ツールとの境界になる。無料ツールで対応できるのは2×アップスケールと、時間をかけられるバッチ処理まで。それ以上では、処理速度、より大きな拡大率、幅広いコーデック対応に対して料金を払うことになる。