MiniMax H3は、MiniMaxがWAIC 2026で披露したマルチモーダル動画モデルです。テキスト、画像、動画、音声を入力として受け取り、音声を同時生成した最大15秒のネイティブ2K動画を出力します。検索結果で混同されがちなM3言語モデルとは別物です。画質解像度だけで見れば、すでにKlingはネイティブ4Kを提供しています。H3の持ち味は、2K出力、同期音声、多数の参照素材を使った制御を、生成1秒あたり$0.13(Sora 2 Proのおよそ4分の1)でまとめている点にあります。
ただし、注意点も2つあります。公式サイトの「Open-Weights」は、現時点で重みをダウンロードできるという意味ではありません。また、公開されているデモ映像はベンダー提供のものです。H3の価格に対する制御性が本当に優位かどうかは、厳選されたショーケース以外でまだ検証される必要があります。
MiniMax H3とは何か:M3とは別の動画モデル
MiniMax H3を開発したのは、Hailuo動画シリーズを手がける上海拠点のMiniMax(稀宇科技)です。公式サイトでは、2026年7月の日付とともに「Next-Generation Open-Weights」と表示されています。
混同の元になっているM3は、約4,280億パラメータ(アクティブ時23B)、100万トークンのコンテキストを備えた言語・コーディングモデルで、重みはすでにHuggingFaceで公開されています。M3はテキスト、H3は動画です。両者がWAIC 2026の同じイベントで発表されたため、Googleの「People Also Ask」では、H3について検索した際の「Is MiniMax 3 free?」という質問にM3の情報が表示されることがあります。「Hailuo 3.0」は第三者による呼称であり、MiniMax自身は「MiniMax H3」のみを使用しています。系譜としてはHailuo 02、Hailuo 2.3の後に位置するモデルです。
MiniMaxは新興の無名企業というわけでもありません。2026年1月の香港IPOでは約$619 millionを調達し、評価額は約$4 billionに達しました。出資者にはAlibabaとTencentも名を連ねています。
確認済みの仕様:2K・15秒・同期ステレオ音声
仕様上、H3はネイティブ2K、固定24 FPSで5〜15秒の動画を生成します。長さは整数秒のみです。会話、効果音、環境音を含むステレオ音声は後から吹き替えるのではなく、映像と同じ生成パスで作られます。768Pの料金帯も用意されています。これらの情報は、2026年7月31日に確認したMiniMaxのAPIドキュメントに基づいています。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ネイティブ解像度 | 2K(768Pの料金帯も利用可能) |
| 動画の長さ | 5〜15秒 |
| フレームレート | 24 FPS |
| 音声 | ネイティブのステレオ音声、同一パスで生成 |
| 開始・終了フレーム | 画像0、1、2枚 |
| オムニリファレンス | 画像≤9枚、動画≤3本、音声≤3本、最大12ファイル |
| アスペクト比 | 21:9、16:9、4:3、1:1、3:4、9:16、適応型 |
| ファイル上限 | 動画≤50MB、画像≤30MB、音声≤15MB |
| プロンプト長 | 最大7,000文字 |
H3が特に力を入れているのが「オムニリファレンス」入力です。画像は最大9枚、動画は3本、音声は3本を同時に参照できます。これらは固定キーフレームとして強制されるのではなく、スタイル、キャラクター、動き、声のガイドとして使われます。同じモデルでリップシンク、声質転写、指示ベースの編集にも対応し、キャラクター、物体、背景、VFX要素を、ゼロから生成し直さず変更内容を記述して差し替えられます。
MiniMax H3の公式料金:噂ではなく確認済みの価格
MiniMaxは料金ページで秒単位の価格を公開しています。2KでのH3は生成1秒あたり$0.13、768Pでは$0.09です。音声入力は無料で、参照画像も最初の5枚までは無料、6枚目以降は1枚あたり$0.04です。
前世代と比べると、H3は必ずしも秒単価が安いわけではありません。Hailuo 2.3の1080Pは約$0.082/sです。ただし、Hailuo 2.3にはネイティブ音声もオムニリファレンスもありません。より広い競合市場と比べたとき、H3の価値はこの秒単価にあります。
「2Kでは、H3の秒単価は主要モデルの3分の1未満。768pでは、主要モデルの720p価格の半額未満です。」 — r/LocalLLaMAの議論
数値を見ても、この評価には根拠があります。H3の2Kは$0.13/sで、第三者アグリゲーターが報告するSora 2 Proの1080P・約$0.50/sのおよそ4分の1です。より安い競合は、約$0.03/sのVeo 3.1 Liteですが、こちらは音声をまったく含みません。そのため別の製品カテゴリと考えるべきです。2Kかつ音声付きという条件では、H3は信頼できる選択肢の中で最も低価格です。
H3とVeo 3.1、Kling 3.0、Seedance 2.0、Sora 2 Pro、Hailuo 2.3を比較
H3は、純粋な映像の精細さで首位に立つモデルではなく、MiniMaxもそう主張していません。訴求点は、2K、ネイティブ音声、手厚い参照制御、そして価格の組み合わせです。すでに複数の競合がネイティブ4Kを提供するなか、H3は解像度競争ではなく、制御性と音声で勝負するモデルです。
| モデル | 解像度 | 最大動画長 | 音声 | 参照制御 | API料金/秒 |
|---|---|---|---|---|---|
| MiniMax H3 | ネイティブ2K | 15秒 | ネイティブ、同一パス生成 | 画像9枚 + 動画3本 + 音声3本 | $0.13(2K) |
| Veo 3.1 | 最大4K | 約8秒 | 48kHzの会話音声 | 限定的 | $0.03〜(Lite、音声なし) |
| Kling 3.0 | ネイティブ4K | 約10秒 | 対応 | 限定的 | 変動 |
| Seedance 2.0 | 最大1080P | 10秒 | 対応 | 限定的 | 変動 |
| Sora 2 Pro | 1080P | 最大約25秒 | 対応 | 限定的 | 約$0.50(アグリゲーター) |
| Hailuo 2.3 | 1080P | 約10秒 | ネイティブではない | なし | 約$0.082 |
Kling 3.0とSeedance 2.0は、MiniMaxと直接比較できる公開の秒単位API料金を出していないため、表では「変動」としています。Soraの金額もOpenAI公式価格ではなく、第三者アグリゲーターの価格です。
実用面での選び分けは明確です。ネイティブ4Kが必要なら、候補はKling 3.0またはVeo 3.1です。音声を最優先するなら、音声重視のSeedance 2.0も選択肢になります。同期音声と複数リファレンス制御を備えた2K映像という条件では、ここで挙げたモデルのうちH3が最も低い秒単価です。なお市場は縮小も進んでおり、SoraのWeb版とアプリ版は2026年4月に終了し、APIも2026年9月に終了予定です。
H3は本当にオープンウェイトなのか
MiniMaxのサイトはH3を「Open-Weights」と表記しています。しかし2026年7月31日時点で、MiniMaxAIのHuggingFace組織にH3のリポジトリはありません。公開されているのはMシリーズのテキストモデル(M1、M2、M3)と、一部の動画特徴抽出器だけです。正確に言えば、H3はオープンウェイトとして位置付けられているものの、重みはまだ公開されていません。これは、「数週間以内に重みが来る」というクリエイタープレビュー由来の見方と、「H3はオープンウェイトではない」という主張の中間にあります。前者は未確認であり、後者は「まだ公開されていない」と「公開されない」を混同しています。
MiniMax H3へのアクセス方法
H3はMiniMax公式のAPI(video-generation-v2エンドポイント)と、MiniMax Hubから利用できます。一般公開のウェイトリストによる制限はありません。
AIReiterはまだH3を統合していません。現時点でリセラー経由で提供できるAI動画モデルでは、すでにプラットフォームにあるモデルが近い領域をカバーしています。高忠実度の映像にはVeo 3.1とKling 3.0、音声が主役ならSeedance 2が候補です。H3がプラットフォームに加わった際には、このページにも反映されます。
H3を選ぶ前に押さえたい弱点
導入を決める前に、2つの注意点を確認しておくべきです。どちらも本記事のハンズオンテストで解決できるものではありません。H3には独立したアリーナスコアがまだなく、公開リーダーボードに載っているのはHailuo 2.3までです。そのため、品質に関する主張を照らし合わせる中立的なベンチマークがありません。流通しているデモ映像も独立検証ではなくベンダー提供です。だからこそ、本記事ではH3の出力品質に関する各主張を実測値として扱わず、出典を付けて紹介しています。
早期アクセス時の評価で報告されている制約には、カットをまたぐキャラクターの一貫性の崩れ、安定しない会話、正確なテキストやブランド表示のアーティファクト、細かな制御の限界、早期アクセス版特有の不安定さがあります。これらはこの段階のモデルに見られがちな課題であり、印象的な1本だけでモデルを選ぶべきではない理由でもあります。成功した動画だけでなく、失敗した動画も検証材料として残しておくべきです。
「MiniMaxの新しいH3 omni動画モデルを早期に試しましたが、良い意味で驚きました。VEO、Klingと並ぶレベルだと評価します……」 — クリエイタープレビューのテスター
FAQ
MiniMax H3とM3は同じモデルですか?
いいえ。H3は動画生成モデルで、M3は約4,280億パラメータの言語・コーディングモデルです。同じイベントで発表され、親会社も共通しているため、検索結果で混同されています。
MiniMax H3はオープンソースですか?
MiniMaxはH3をオープンウェイトとして位置付けていますが、モデルの重みはまだ一般公開されていません。現時点でHuggingFaceにあるのはMiniMaxのテキストモデルだけです。
MiniMax H3の料金はいくらですか?
公式APIでは、2Kの生成1秒あたり$0.13、768Pでは$0.09です。音声入力と最初の5枚の参照画像は無料です。
AIReiterでMiniMax H3は使えますか?
まだ使えません。AIReiterはH3を統合していません。現時点で利用可能なAI動画モデルとしては、Veo 3.1、Kling 3.0、Seedance 2がプラットフォームにあります。
H3はVeoやKlingより優れていますか?
解像度だけなら優れていません。KlingとVeoはネイティブ4Kを提供しています。上の比較表のとおり、H3は4Kの代わりに、同一パスでの音声生成とより充実した参照制御を、より低い秒単価で提供するモデルです。
H3の重みはいつダウンロードできますか?
MiniMaxは日程を示していません。コミュニティでは「今後数週間」という報告がありますが、HuggingFaceにリポジトリが現れるまでは未確認情報として扱うべきです。
最大の未解決点は、MiniMaxが予定どおりに重みを公開するかどうかです。それまでは、H3はセルフホスト可能なモデルではなく、有力なAPI選択肢と捉えるのが妥当です。