通常ならProモデルが勝つところですが、今回は違います。 Gemini 3.6 Flash はGemini 3.1 Proより低価格で、出力速度は2倍超。コーディングやエージェント系のベンチマークでも、ほぼすべてで3.1 Proを上回ります。一方、旧世代の3.1 Proが保持している強みはひとつだけです。最も難しい純粋な推論テストでは、わずかに優位です。両モデルに同じタスクを実行させ、以下の価格と仕様は2026年7月23日にGoogleの公式ドキュメントおよびArtificial Analysisで再確認しました。
結論だけ先に:30秒でわかる比較
Gemini 3.6 Flash | Gemini 3.1 Pro | 優位 | |
|---|---|---|---|
API料金(入力/出力、100万トークン、≤200k) | $1.50 / $7.50 | $2.00 / $12.00 | Flash |
長いプロンプト(>200kトークン) | 同一の固定料金 | $4.00 / $18.00 | Flash |
出力速度 | 261 tokens/s | 112 tokens/s | Flash |
コーディング・エージェント系ベンチマーク | 4つの直接比較をすべて制覇 | — | Flash |
最難関の推論(GPQA、HLE) | — | 1.3~6.4ポイント上回る | 3.1 Pro |
知識カットオフ | 2026年3月 | 2025年1月 | Flash |
リリース状況 | 一般提供済み | 2026年2月からPreview | Flash |
ここだけ読めば十分という人向けに結論を言うと、基本はGemini 3.6 Flashを選び、推論性能の上限が必要なタスクだけ3.1 Proを使うのがおすすめです。読む手間を省きたいなら、 Gemini 3.6 Flash と Gemini 3.1 Pro を、APIキーなしでブラウザチャットから自分のプロンプトで直接比べることもできます。以下では、その根拠と再現可能な3タスクのテスト結果を見ていきます。
料金差はどれくらいか
Gemini 3.6 Flashはプロンプト長にかかわらず固定料金です。対してGemini 3.1 Proは単価が高く、長いプロンプト向けの料金帯もあります。2026年7月23日に確認した、100万トークンあたりの通常API料金は以下のとおりです。
Gemini 3.6 Flash | Gemini 3.1 Pro | |
|---|---|---|
入力(≤200k) | $1.50 | $2.00 |
出力(≤200k) | $7.50 | $12.00 |
入力(>200k) | $1.50 | $4.00 |
出力(>200k) | $7.50 | $18.00 |
コンテキストキャッシュ読み出し(≤200k) | $0.15 | $0.20 |
Batch(入力/出力、≤200k) | $0.75 / $3.75 | $1.00 / $6.00 |
特に差が出るのは出力です。短いプロンプトでは3.1 Proの出力トークン単価は60%高く、プロンプトが200kトークンを超えると最大140%高くなります。
割引モードでも差は変わりません。Batchモードでは両モデルとも料金が半額になりますが、Proは依然として60%高額です。トークン読み出し料金とは別に時間課金されるキャッシュ*保存*料金も、Proは100万トークン・1時間あたり$4.50、Flashは$1.00です。Googleの公開リスト価格では、通常、Batch、Priority、キャッシュのいずれでもProのほうが安くなるケースはありません。
同一の3タスクで実測した
料金表はトークン使用量が同じであることを前提にしています。そこで2026年7月22日、OpenRouter経由で両モデルに同一の3プロンプトを送りました。モデルIDはgoogle/gemini-3.6-flashとgoogle/gemini-3.1-pro-preview、temperatureは0、各1回ずつの実行です。
1. コード:docstringと使用例を含むPythonのmerge_intervals関数を書く 2. 推論:時間と速度の代数計算が必要な、2本の列車の追いつきに関する文章題 3. 抽出:雑然としたチームメッセージからアクションアイテムをJSON配列として取り出す
タスク | Flashのレイテンシ | Proのレイテンシ | Flashのコスト | Proのコスト |
|---|---|---|---|---|
コード | 2.4s | 4.5s | $0.0085 | $0.0102 |
推論 | 1.9s | 2.4s | $0.0082 | $0.0118 |
抽出 | 1.3s | 2.6s | $0.0049 | $0.0057 |
合計 | 5.65s | 9.48s | $0.0215 | $0.0277 |
*合計値は生のミリ秒・トークンログから算出しています。タスク別の行は丸めているため、列を合計すると0.01ずれる場合があります。*
正解率は両モデルとも3タスクすべてで問題ありませんでした。区間のマージは正しく、追いつく時刻も正解、JSONもきれいに出力されました。違いは、その回答にかかったコストです。
FlashはProより*多く*のトークンを生成しました。OpenRouterの使用量メタデータでは2,843対2,285で、その多くは両モデルの内部推論トークンです。それでも、エンドツーエンドでは22%安く、40%速い結果になりました。Proは回答が簡潔な一方、出力単価の高さと生成速度の遅さがそれを上回ります。各ステップでレイテンシが積み重なるエージェントループでは、この差はさらに大きくなります。

3つの短いプロンプトはあくまでスポットチェックであり、ベンチマークではありません。したがって、ここでの正確な割合は参考値として扱ってください。ただし、傾向はより大規模な測定結果と一致しています。次にそちらを見ます。
コーディングとエージェント系はFlashが全勝
公開されている直接比較の数値では、Artificial Analysisによると、3.6 Flashはコーディング、MLエンジニアリング、ターミナル操作の全領域で旧世代の3.1 Proを上回っています。
ベンチマーク | Gemini 3.1 Pro | Gemini 3.6 Flash |
|---|---|---|
DeepSWE v1.1 | 12% | 49% |
MLE-Bench | 42.6% | 63.9% |
SWE-Bench Pro | 54.2% | 58.7% |
Terminal-Bench 2.1 | 73.8% | 78.0% |

差が最も大きいのはDeepSWEで、49%対12%です。Flashはマルチモーダル推論でもProをわずかに上回り、MMMU-Proは83.2%対82.4%。総合指標のArtificial Analysis Intelligence Indexも50対46でFlashが勝っています。
速度でも傾向は同じです。2026年7月23日時点でArtificial Analysisの測定では、Flashは261 tokens/second、3.1 Proは112で、Flashは2.3倍です。標準ワークロードの最初のトークンが出るまでの時間も、Flashは12.8s、Proは31.2sでした。この最初のトークンまでの数値には、回答を開始する前の各モデルの思考時間も含まれるため、前述の短いタスクはもっと早く完了しています。全体のリーダーボードに視野を広げると、Flashは3つの軸すべてで上位に位置します。

長文コンテキストには、正しく押さえておきたい違いがあります。両モデルとも100万トークンの入力を扱えますが、極端に長い入力から*情報を見つける*能力ではFlashが大幅に優位です。100万トークンでのMRCR検索は54%対27%未満でした。ただし、長い入力を*推論する*能力ではProがわずかに優れます。これは次で取り上げます。
Gemini 3.1 Proがまだ勝てる領域
フラッグシップモデルにも公平を期すなら、3.1 Proが上回るベンチマークは3つあります。いずれも難度の高い知識・推論テストです。
ベンチマーク | Gemini 3.1 Pro | Gemini 3.6 Flash |
|---|---|---|
GPQA Diamond(博士課程レベルの科学) | 94.1% | 92.8% |
Humanity's Last Exam(ツールなし) | 44.7% | 38.3% |
AA-LCR(長文コンテキスト推論) | 72.7% | 69.7% |
GPQAと長文コンテキスト推論での差は小さく、Humanity's Last Examではやや広がります。Googleは3.1 Proを「幅広い世界知識とモダリティをまたぐ高度な推論を必要とする複雑なタスク」向けに位置付けています。研究レベルの科学的な質問や、長文資料を対象にした多段階推論など、この最前線に属するワークロードでは、実際に性能の余地があり、追加コストを払う価値があります。
ただし、実用上は次の2点に注意が必要です。
知識が古い。 Proのカットオフは2025年1月で、Flashの2026年3月より14か月前です。フラッグシップモデルのほうが、現在の世界に関する知識は少なくなっています。
Previewのまま。 2026年2月のリリースから5か月後も、3.1 ProはGoogleの料金ページでPreviewと表記されています。モデルID自体も
gemini-3.1-pro-previewです。一方のFlashは、現行の安定版デフォルトとして提供されています。
結局どちらを使うべきか
Gemini 3.6 Flashを選ぶケース:コーディングエージェント、ターミナルやコンピュータ操作の自動化、MLエンジニアリング、高ボリュームの抽出・分類、低レイテンシが求められるアプリ、長文ドキュメントの検索です。公開数値では、これらすべてでFlashはより安く、速く、知識が新しく、スコアも高くなっています。
Gemini 3.1 Proを選ぶケース:博士課程レベルの科学や長い入力に対する多段階分析など、最前線の推論が必要で、数ポイントのベンチマーク差をコスト・速度・知識の新しさより重視する場合です。Preview段階の変動も見込んでおく必要があります。安定版が登場すると、PreviewモデルIDは変更または廃止されることがあります。
この比較だけでは判断できないことが2つあります。ひとつは、あなた固有のツール呼び出しパターンにおける信頼性。もうひとつは、ドメイン特有のエッジケースでの出力品質です。
両モデルは同じGemini APIで提供されているため、最も手軽な決着方法は、重要なプロンプト10件を両方に実行させることです。上記の3タスク用スクリプトなら、実行には約1分しかかかりません。
両モデルへのアクセス方法
両モデルはGemini APIとGoogle AI Studioで利用できます。モデルIDはgemini-3.6-flashおよびgemini-3.1-pro-previewです。Google AI Studioの無料枠でも、導入前に2つを並べてテストできます。
すでにアグリゲーターを経由しているなら、OpenRouterとAIReiterのどちらでも、Googleのリスト価格で1つのキーから両モデルを利用できます。上記のA/Bテストもこの方法で実行しました。
よくある質問
Gemini 3.6 Flashは3.1 Proより優れていますか?
多くの本番ワークロードでは、はい。コーディング、エージェント、ML、コンピュータ操作、マルチモーダルの各ベンチマークで優位に立ち、コストも低く、速度は2.3倍です。3.1 Proが上回るのはGPQA Diamond、Humanity's Last Exam、長文コンテキスト推論だけで、差は1.3~6.4ポイントです。
Gemini 3.6 Flashは3.1 Proより安いですか?
はい、すべてのモードで安価です。通常APIの出力料金は100万トークンあたり$7.50対$12.00です。200kトークンを超えるプロンプトでは差がさらに開き、$7.50対$18.00になります。BatchモードでもProの60%高い価格差は変わりません。キャッシュ保存はProのほうが4.5倍高額です。
Gemini 3.6 Flashと3.1 Proはどちらが速いですか?
Flashです。Artificial Analysisの2026年7月23日の測定では、Flashは約261 tokens/second、3.1 Proは112 tokens/secondです。回答開始もFlashのほうが早く、推論負荷の高いワークロードにおける最初のトークンまでの時間は12.8s対31.2sでした。3タスクの実測でも、エンドツーエンドでFlashは40%速く完了しました。
Gemini 3.1 Proを使う価値はまだありますか?
Proの推論性能上限が必要で、知識カットオフが2025年1月のPreview段階モデルを許容できる場合に限られます。それより低い難度のタスクでは、追加コストによってFlash以上の出力品質が得られることを示す公開数値はありません。
