DeepSeekが本日、deepseek-v4-flashをひそかに更新した。同一の4つの採点タスクでGLM-5.2と比較したところ、3つは同点、残る1つはFlashが勝利し、実行コストは19倍低かった。ただし、ベンチマーク上では依然としてGLM-5.2のほうが高性能だ。今回GLM-5.2が4つ目のタスクを落とした理由は、意図して踏める落とし穴にある。
その落とし穴とは、推論用のトークン予算だ。今回利用したエンドポイントでは、GLM-5.2は短いプロンプトにも長く推論する傾向があった。仕様が細かいタスクの1つでは、16,000出力トークンを使い切っても回答本文を一切返さなかった。一方のFlashは、同じタスクを2,525トークンで完了した。
deepseek-v4-flashの0731更新で変わったこと
DeepSeekのAPIドキュメントでは、deepseek-v4-flashのモデルバージョンがDeepSeek-V4-Flash-0731になっている。呼び出し方は従来どおりで、エイリアスも最新ビルドを指し続ける。そのためコードは壊れず、内部のモデルが切り替わったことも利用側には通知されない。
価格ページには今回の更新に関する変更履歴はなく、2026-07-31に確認したDeepSeekのニュース一覧にも2026年7月の項目はなかった。比較記事を読む際に重要なのはここだ。公開済みのFlashスコアは、その評価時点で稼働していたビルドを測っているにすぎない。評価日だけでなくモデルのバリアントも確認したい。「Flash Base」「Flash (Reasoning)」「Flash (Reasoning, Max Effort)」は、それぞれ別の数値を持つ異なる行だからだ。
同じドキュメントには、直接比較で重要な仕様も載っている。コンテキストは1M、最大出力は384K。thinking modeはデフォルトで有効で、非thinking modeも利用できる。並行実行上限はProの500に対して2,500だ。Responses APIが現在サポートするのはdeepseek-v4-flashのみで、deepseek-v4-proは2026年8月上旬の対応予定とされている。
4タスクを同条件で実行した結果
2026-07-31に、OpenAI互換のリレー経由で両モデルへ同一プロンプトを送った。thinkingはデフォルト設定のままとし、特記がない限りmax_tokensは8,000に設定した。出力は目視ではなく機械的に採点している。2つのコーディングタスクはそれぞれ6件・8件の非公開テストケースで実行し、JSONタスクは要求スキーマに対してキー単位で検証、検索タスクには正解文字列が1つだけある。
| タスク | DeepSeek V4 Flash (0731) | GLM-5.2 |
|---|---|---|
| t1 — 区間マージのエッジケースを特定して修正 | 6/6テスト、5.0秒、出力361 | 6/6テスト、19.0秒、出力990 |
t2 — 8ルール仕様のnext_version()を実装 | 8/8テスト、29.9秒、出力2,525 | 回答なし |
| t3 — 厳格なJSON、キー完全一致、フェンスなし | 合格、5.2秒、出力327 | 合格、11.2秒、出力826 |
| t4 — 約45Kトークンから3つの事実を検索・結合 | 正解、5.2秒、出力172 | 正解、9.7秒、出力317 |
4件中3件は、率直に言って同点だ。t1では両モデルとも、(1,4)と(4,5)のように端点が接する区間をマージできない、厳密な<比較のバグを見つけた。そして両者とも1文字の同じ修正を出した。厳格JSONタスクも両方が完全一致で通過。t4も、レコード211に埋め込まれた秘密とレコード1290のルールを組み合わせ、quartz-mallard-90を正しく返した。
例外はt2で、ここは勝利宣言ではなく正確に記しておきたい。GLM-5.2は誤答したのではない。そもそも回答しなかった。8,000トークン上限では推論に8,000トークンをすべて使い、110秒後に空のcontentを返した。上限設定が原因ではないかを切り分けるため16,000でも再実行したが、16,000トークンを消費しても内容は空のまま、214秒だった。24,000での3回目は301秒後にエラーとなった。Flashは、ValueErrorを送出すべき3ケースを含む全8ケースに通る関数を生成した。
前提として明記しておく。この結果は1つのリレーエンドポイントで各タスクn=1を実行したものであり、ベンチマークではない。ここでは推論トークンもcompletion_tokensに含めて課金される一方、公式のZ.aiエンドポイントではストリーミングや計上方法が異なる可能性がある。このデータから言えるのは厳密な倍率ではなく傾向だ。GLM-5.2はタスクあたりのトークン消費量も実時間も大幅に多い。
能力面ではGLM-5.2が明確に強い領域
業界で実際に使われる評価指標で見れば、GLM-5.2のほうが強い。今回の結果を見て「安いモデルがすべてに勝つ」と読むのは誤りだ。Artificial AnalysisのIntelligence Indexでは、GLM-5.2 (max)は51、DeepSeek V4 Flash (Reasoning, Max Effort)は40で、差は11ポイントある。モデル規模もGLM-5.2は総パラメータ753B・アクティブ約40Bで、Flashの総284B・アクティブ13Bを大きく上回る。
Z.aiが公開しているGLM-5.2の数値も、フラッグシップモデルとして予想どおりの水準だ。SWE-bench Proは62.1%、Terminal-Bench 2.1は81.0、AIME 2026は99.2%、GPQA Diamondは91.2%、ツール利用時のHLEは54.7%。これらはベンダー公表値であり、Flashには大半の項目で比較可能な数値がない。
ベンチマークに関する実態は、この欠落に尽きる。両モデルが共通して受けている評価はほぼない。モデル追跡サイトbenchlmは両者を比較しているが、同条件の行がゼロであるとして勝者の判定を避けている。Flashの公開値はベースモデル向けスイートのものだ。MMLU 88.7%、HumanEval 69.5%、GSM8K 90.8%。対するGLM-5.2の値は、エージェント型コーディングのスイートから来ている。
両者が重なるのは知識カテゴリだけで、benchlmではGLM-5.2が59.6、Flashが56.4とGLM-5.2が上回る。この対決について比較ページごとに結論が異なるなら、通常は別バリアントを別スイートで評価しているためだ。利用予定のモデルと日付に一致する数値を信頼すべきである。
実務ユーザーの見方も、今回の測定結果と同じ方向を示している。両モデルに同一タスクを実行させたr/opencodeCLIのスレッドから引用する。
GLM 5.2 reasons hard on everything. V4 scales it, almost no wind-up on the simple fix, GLM 5.2 pulls ahead on anything that is not banally [simple] …
要するにこういうトレードオフだ。GLM-5.2の強い推論は難問では武器になるが、簡単な問題では純粋なオーバーヘッドにもなる。
価格表以上に開く実コスト差
まずはリスト価格から確認しよう。いずれも2026-07-31に各ベンダー公式ページで確認した。
| 100万トークンあたり | DeepSeek V4 Flash | GLM-5.2 | GLM倍率 |
|---|---|---|---|
| 入力(キャッシュミス) | $0.14 | $1.40 | 10.0x |
| 入力(キャッシュヒット) | $0.0028 | $0.26 | 92.9x |
| 出力 | $0.28 | $4.40 | 15.7x |
| 最大出力 | 384K | 128K | — |
この料金を4タスクで実際に各モデルが使ったトークンへ当てはめると、差は出力単価の15.7倍を超えて広がる。高価なモデルのほうが、出力も多いからだ。
| タスク | Flash 入力→出力 | Flashコスト | GLM-5.2 入力→出力 | GLM-5.2コスト | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| t1 バグ修正 | 165→361 | $0.000124 | 170→990 | $0.004594 | 37.0x |
| t2 実装 | 182→2,525 | $0.000732 | 196→16,000 | $0.070674 | 96.5x |
| t3 厳格JSON | 171→327 | $0.000116 | 177→826 | $0.003882 | 33.5x |
| t4 長文コンテキスト | 45,225→172 | $0.006380 | 44,164→317 | $0.063224 | 9.9x |
| 4タスク合計 | 45,743→3,385 | $0.007352 | 44,707→18,133 | $0.142375 | 19.4x |
すべてのプロンプトはコールド状態で送信したため、入力はすべてキャッシュミス料金で計算している。上表の各値は、ひとつ前の料金表の単価を掛ければ再現できる。
最も差が小さいのはt4の9.9倍だ。入力トークンの比重が大きい仕事では、10倍の入力単価差が支配的になり、出力の冗長さは効きにくくなる。GLM-5.2のプレミアムが比較的抑えられるのは、このタイプのワークロードである。
DeepSeekの料金ページには、北京時間(UTC+8)の09:00〜12:00および14:00〜18:00について、全請求項目を2xとするピーク・オフピーク料金をAPIに「まもなく」導入するとある。適用日は今後発表される予定だ。これが導入されれば、アジアの営業時間中におけるFlashの出力単価優位はおよそ5倍まで縮む。一方で、Flashのキャッシュヒット入力は$0.0028で、GLM-5.2の$0.26より93倍安い。大きく安定したプレフィックスを繰り返し使うなら、差はさらに広がる。コーディング用途に限れば、Z.aiにはGLM-5.2を含み、オフピーク利用が半額となる月額$18からのCoding Planもある。これは上記のトークン従量課金とは別の請求体系だ。
ワークロード別:どちらを呼ぶべきか
| ワークロード | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 大量のシンプル〜中程度のコード修正 | V4 Flash | t1ではGLM-5.2と同じ回答で、3.8倍高速、37倍安価 |
| 大規模な厳格フォーマット/構造化出力 | V4 Flash | バイト単位で同一の結果を1/34のコストで得られた |
| 大きな文書を対象にした長文コンテキスト検索 | V4 Flash | 同じ正解。コスト差は最小だが、それでも9.9倍 |
| 難しいエージェント型または複数ファイルのコーディング | GLM-5.2 | Intelligence Indexは51対40で、強みはエージェント型スイートで示されている |
max_tokensが厳しいあらゆる用途 | V4 Flash | 今回のt2でGLM-5.2は8K・16K上限のどちらでも回答を返さなかった |
| 1回の呼び出しで128Kトークンを超える出力 | V4 Flash | GLM-5.2の最大128Kに対し、最大出力は384K |
これは確定したルールではなく、1回・4タスクの実行結果に基づく、検証すべきコストルーティングの初期値として扱ってほしい。基本はFlashへ送り、誤答の損失がトークン支出の19倍を超える一部のタスクでGLM-5.2へエスカレーションするのがよい。GLM-5.2を使うなら、十分な余裕を持たせたい。Flashなら余裕のある上限でも、課金だけ発生して回答が返らない可能性がある。
この比較だけでは判断できない点もある。0731が本日公開された後、Flashを第三者が再評価した結果はまだ出ていない。したがって51対40の差が示すのは4月ビルド同士の距離だ。現行モデルの能力差は未測定であり、自分のワークロードにおける差を測るには、両エイリアスを対象に独自評価を走らせるしかない。
FAQ
DeepSeek V4 Flash 0731は新モデル、それともアップデート?
新モデルではなく、既存モデルのアップデートだ。DeepSeekのドキュメントではバージョンがDeepSeek-V4-Flash-0731とされ、呼び出し方法は変わらない。つまり、利用側でコードを変えなくてもdeepseek-v4-flashは最新ビルドを参照し続ける。
DeepSeek V4 FlashはGLM-5.2に勝った?
能力面では勝っていない。Artificial AnalysisではGLM-5.2 (max)が51、DeepSeek V4 Flash (Reasoning, Max Effort)が40だ。一方、解決できたタスクあたりのコストではFlashが勝った。4つの採点タスクのうち3つで同点となり、総コストは19.4倍低かった。
GLM-5.3はもう出ている?
2026-07-31時点では出ていない。Z.ai公式の価格表とCoding Planのモデル一覧ではGLM-5.2が最新で、どちらにも5.3の行はない。
100万トークンのコンテキストを扱う仕事では、どちらが安い?
DeepSeek V4 Flashだ。キャッシュミス入力では10倍、キャッシュヒット入力では93倍安い。約45Kトークンの検索タスクでは、Flashが$0.006380、GLM-5.2が$0.063224だった。
Claude Codeで両方使える?
使える。両ベンダーともAnthropic形式のエンドポイントを案内している。DeepSeekはOpenAI形式のベースURLとともにhttps://api.deepseek.com/anthropicを掲載している。Z.aiのClaude Codeガイドでは、ANTHROPIC_BASE_URLをhttps://api.z.ai/api/anthropicに設定し、SonnetとOpusのスロットをglm-5.2[1m]へマッピングする。
関連記事
出典
- DeepSeek Models & Pricing — 0731のバージョン注記、料金、ピーク・オフピーク方針。2026-07-31確認
- Z.ai pricing — GLM-5.2料金。2026-07-31確認
- Z.ai Coding Plan — サブスクリプション階層とGLM-5.2の対象範囲。2026-07-31確認
- Z.ai: Claude Code setup — Anthropic互換ベースURLとモデルマッピング
- DeepSeek news index — 2026-07-31確認。2026年7月の項目なし
- Artificial Analysis: GLM-5.2 vs DeepSeek V4 Flash — Intelligence Index、パラメータ数
- benchlm: DeepSeek V4 Flash Base vs GLM-5.2 — 共通ベンチマークのカバレッジ、知識スコア
- r/opencodeCLI: DeepSeek V4 vs GLM 5.2 for coding — 実務ユーザーのレポート